ニュートリノ実験

当研究室では,以下のような研究を行っています。ニュートリノ実験を主にやっている横山准教授のページもご覧下さい。

T2K長基線ニュートリノ振動実験(実験グループ公式ページ

T2K実験の概要。 茨城県東海村のJ-PARC陽子加速器で作り出した強力なニュートリノビームを295km離れたスーパーカミオカンデで検出し,ニュートリノ振動の研究を行っている。

茨城県東海村のJ-PARC陽子加速器で生成したニュートリノビームを,295km離れたスーパーカミオカンデで観測し,その間に起こるニュートリノ振動を観測することで謎めいたニュートリノの性質の背後にある物理に迫ろうとしています。

特に,ニュートリノとその反粒子である反ニュートリノでニュートリノ振動の様子が同じかどうか,を確かめる実験を行っています。これは粒子と反粒子の間の対称性,すなわちCP対称性の検証です。これまでCP対称性の破れはクォークでしか見つかっておらず,ニュートリノのようなレプトンでCP対称性が破れているかどうかは,宇宙初期にビッグバンで同数だけ生成されたはずの粒子と反粒子(物質と反物質)から,現在の宇宙で粒子だけが残っている謎の解明につながると考えられています。

T2K実験は,ニュートリノでのCP対称性の検証が可能な人類初の実験であり,今後数年で最初の兆候が得られるのではないかとワクワクしています。

  • INGRID検出器
    • ニュートリノビームの安定性をモニターする,重要な測定装置です。当研究室の大学院生が主力となって実験期間中の運用を行っています。
  • WAGASCI(わがし)検出器
    • 当研究室の大学院生が中心となって設計・開発してきた検出器です。ニュートリノの反応に関する新たなデータを得て,ニュートリノ振動の測定に関する系統誤差を削減することを目指します。
  • 前置検出器アップグレード
    • J-PARC敷地内に設置した,振動前のニュートリノの性質を測定するための前置検出器を,これまでにT2K実験で得られた経験を元にさらに高性能な検出器にアップグレードする計画を進めています。
  • ニュートリノ反応の研究
    • 前置検出器を使って,ニュートリノと原子核の反応を測定しています。この情報は,ニュートリノ振動の測定をするときの系統誤差を削減するためにも非常に重要となります。
  • ニュートリノ振動の精密測定
    • T2K実験のデータを使って,世界最高精度でニュートリノ振動の測定を行っています。反電子ニュートリノ出現(反ミューオンニュートリノから反電子ニュートリノへの変換)の世界で初めての観測も狙っています。

スーパーカミオカンデ実験(実験グループ公式ページ

スーパーカミオカンデ検出器の内部(東京大学宇宙線研究所)。通常は5万トンの超純水で満たされ,微弱なチェレンコフ光を観測するために外部からの光が入らないよう閉じられている。

  • 実験開始から20年以上経つスーパーカミオカンデですが,大気ニュートリノ,太陽ニュートリノ,超新星ニュートリノ等の観測で未だ世界最高の装置であり,世界最高の成果を出し続けています。
  • 1016GeVという超高エネルギーで実現していると考えられる,3つの力(電磁相互作用,弱い相互作用,強い相互作用)が一つに統一され,クォークとレプトンも統一される「大統一理論」を直接検証できる唯一の実験である,陽子崩壊の探索を行っています。当研究室では,新しい事象再構成プログラムを使い従来より感度を上げた解析で陽子崩壊の探索を行いました(須田・博士論文,2017)。
  • スーパーカミオカンデはさらに進化します。ガドリニウムを用いて中性子の検出効率を上げ,超新星背景ニュートリノの測定などを行う「SK-Gdプロジェクト」が進行中です。2018年には,その準備としてスーパーカミオカンデ検出器の大規模な補修が予定されています。12年ぶりに,水を抜いて内部作業を行う見込みです。

ハイパーカミオカンデ計画(実験グループ公式ページ

ハイパーカミオカンデ計画の概要。

素粒子や宇宙の研究をさらに進めるため,スーパーカミオカンデよりもさらに一桁大きい水チェレンコフ検出器,「ハイパーカミオカンデ」を建設する計画を提案しています。これまでスーパーカミオカンデを利用して行ってきた研究を,さらに飛躍的に進展させることができると期待しています。

  • ニュートリノ振動におけるCP非対称性の測定
    • T2K実験で研究しているニュートリノ振動でのCP対称性の破れをさらに精密に測定し,背後にある物理法則に迫ります。
  • 陽子崩壊の発見へ!
    • スーパーカミオカンデに比べても約10倍の大質量(つまり,観測できる陽子の数が約10倍)に加えて,高感度・高性能の測定器を実現することで,陽子崩壊の寿命にしてこれまでの10倍以上の感度で探索を行い,大統一理論の直接的証拠である陽子崩壊の初観測を目指します。
  • 新型光検出器の開発
    • ハイパーカミオカンデの性能を向上させるため,これまでよりも性能の良い光検出器の開発を行っています。